ChatGPTのようなAIは、まるで人間のように自然な文章を生み出します。
ですが、その裏側でどんな仕組みやチップが動いているか、気になったことはありませんか?
この記事では、ChatGPTが動くために使われているGPU、Googleが開発したTPU、そして近年注目されるAIアクセラレータについて、初心者にもわかりやすく解説します。
ChatGPTの“中身”はなに?|巨大なAIモデルが動いている
ChatGPTは、OpenAIが開発した「大規模言語モデル(LLM)」です。
これは膨大なテキストデータを学習して、人間のように言葉を理解し、文章を生成できるAIです。
中でも、ChatGPT-3.5やGPT-4といったモデルには数千億個のパラメータがあり、「AIの脳」とも言える構造になっています。
このAIモデルを動かすには、非常に大量の計算が必要です。
そのため、一般的なパソコンではなく、超高性能な演算チップ(GPUなど)が使われています。
AIが動くには「学習」と「推論」がある
AIの処理には、大きく分けて以下の2つの段階があります。
- 学習(トレーニング):過去のデータをもとにAIの頭脳をつくる工程
- 推論(インフェレンス):実際に質問に答えたり、文章を生成する処理
ChatGPTが私たちの質問に答えるのは、この「推論」にあたります。
そしてこの処理には、同時に何千もの計算をこなせる演算能力が求められるのです。
GPUとは?|ChatGPTを動かす“並列処理の王様”
GPU(Graphics Processing Unit)は、もともとゲームやグラフィック処理に使われていたチップです。
CPUに比べて、同時に多くの計算を並列でこなす力に優れているため、AIの学習や推論にも非常に向いています。
現在のChatGPT(特にGPT-4)は、NVIDIAのA100やH100といった高性能GPUを大量に使って動いています。
💡 ちなみに、ChatGPTを支えるOpenAIのクラウド環境には、数万〜数十万枚のGPUが使われていると言われています。
TPUとは?|GoogleがAIのために作った特化型チップ
TPU(Tensor Processing Unit)は、Googleが開発したAI専用のチップです。
Google検索やGmailなどにも使われており、学習と推論の両方に対応しています。
GPUよりも消費電力が低く、コスト効率に優れているのが特徴です。
OpenAIでは使われていないものの、Google BardやGeminiなどのAIではTPUが活用されています。
チップ | 開発元 | 主な用途 |
---|---|---|
GPU | NVIDIA | ChatGPTなど多数のAIモデル |
TPU | Gemini(旧Bard)、Google製AI全般 |
AIアクセラレータとは?|AIのための“専用エンジン”
AIアクセラレータとは、AI処理に特化して設計されたチップの総称です。
GPUやTPUとは異なり、「AI処理だけに集中して効率化する」という考え方で設計されています。
演算方法・回路構成・省エネ設計など、AIの“使い勝手”を重視した構造です。
注目されている企業には、以下のようなものがあります。
企業名 | チップ名 | 特徴 |
---|---|---|
Groq(グロック) | LPU | 高速でシンプルな構造。生成AIに最適 |
Graphcore(グラフコア) | IPU | 脳に近い並列処理設計 |
Tenstorrent(テンス・トレント) | Ascalonなど | RISC-Vベース。汎用性が高く開発者向け |
このようなチップが今後、ChatGPTのような大規模AIにも導入される可能性があります。

ChatGPTは実際に何で動いているの?
現時点では、NVIDIA製のGPU(A100やH100)がChatGPTを動かすメインのチップです。
OpenAIのCEOサム・アルトマン氏も、NVIDIAのGPU供給が足りないことを理由に「独自チップ開発の必要性」に言及しています。
✅ 今後、AI専用のアクセラレータやカスタムチップの導入が進めば、コストや速度の面で大きな変化があるでしょう。
今後のカギを握るチップとは?
ChatGPTをはじめとする生成AIが広く使われる中で、次の課題は次の3つです:
- 電力消費の削減
- コストの低減
- 処理の高速化
これらの課題に対応する形で、以下の企業が台頭しています:
- Groq:ChatGPT以上の速度を目指す独自構造
- Graphcore:脳のような並列処理で、効率的に言語処理
- Tenstorrent:自由度の高いRISC-V設計で開発者人気が高い
OpenAIやMicrosoftも、今後はGPU一強ではなく、複数のチップを使い分ける時代に入ると考えられています。
用語解説(初心者向け)
用語 | 意味 |
---|---|
LLM(大規模言語モデル) | 大量の文章を学習したAIモデル(ChatGPTなど) |
GPU | 映像処理向けに開発されたチップ。AIにも対応 |
TPU | Google開発のAI専用チップ。省電力かつ高性能 |
AIアクセラレータ | AI処理専用に作られた最新チップの総称 |
RISC-V | オープンソースのプロセッサ設計規格。自由度が高い |
まとめ|AIの進化はチップの進化とともにある
ChatGPTのような生成AIは、高度な演算を支える専用チップの存在によって成立しています。
現時点ではGPUが主役ですが、TPUやAIアクセラレータといった新しい選択肢も急成長中です。
今後は、「どのチップを使うか」がAIのスピード・コスト・環境負荷などを左右し、技術選定が企業戦略にも直結する時代がやってくるでしょう。
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